こんばんわ。
弁護士の宮本です。
今日は,先日出ました養育費の新算定表についてお話致します。
日弁連は,昨年11月15日に養育費の算定に関する新しい基準,新算定表を公表しました。
詳細は,このpdfをご確認ください。
今までの算定表は,東京と大阪の家庭裁判所の研究チームが作成し,判例タイムズの1111号(2003年4月)に掲載して発表したものです。
この算定表については,①子どもの年齢と人数,②権利者の年収,③義務者の年収という3つがわかれば簡単に養育費や婚姻費用を算定できるもので,非常に簡便であることから広く使用されています。
現在,養育費や婚姻費用の調停では,100%に近いくらい,この算定表が持ち出され,議論が進められています。
無論,簡単に算定できることはとても優れているのですが,事案に即した算定にならないこともしばしばあります。
そこで,これまでの算定表を見直し,新しい算定基準を打ち出したのが,今回発表された「新算定表」です。
初めに申しておきますと,この新算定表で算定した場合,これまでの養育費や婚姻費用より,金額は高くなります。
これは見直した項目に由来しているのですが,まずは見直した項目とその理由についてご説明します。
1 まず,税金や社会保険料,年金保険料などを,最新のものに改めました。これまでの算定表(次からは「現算定表」と言います)は,2003年当時の税率で計算してましたし,そもそも社会保険料などは適当に定められていました。これを2016年版に改め,今後税率が改定した場合にも対応できるようにしました。
2 義務者の住居費を控除しないこととしました。現算定表では,可処分所得(養育費を計算する基礎となる金額=自由に使えるお金,と思ってください)を計算する際に,義務者の住居費を控除していましたが,お子さんの住居費と義務者の住居費は同じく可処分所得から分担させるべき,という観点から,義務者の住居費は可処分所得に含めることとなっています。
3 可処分所得を計算する際に控除する職業費の計算方法を見直しました。これまで,控除する職業費の費目は,世帯全員でかかる金額を控除していましたが,これは不公平だ,ということで,義務者にかかる金額のみを控除することとしました。何を言っているか少しわかりづらいと思いますので,少し解説します。これまで,可処分所得を計算する際,収入から一定額を「職業費」として控除していました。この職業費は,当時の家計調査年報から引っ張っていたのですが,そこに記載されていた金額は,世帯全員の金額だったんですね。例えば,4人世帯であれば,携帯代は月25,000円としましょうか。そうすると,現算定表では,この25,000円がまるまる職業費として控除されていました。ただ,これは4人だから25,000円なので,義務者1人であれば25,000円もかからないですよね。そこで,働いている人の人数分の金額を計算して,その金額のみを控除するようにしました。
その他にも見直した点はあるのですが,大きな変更点はこの3つです。
今後,すぐには算定基準は変わらないと思いますが,少なくとも税率などは最新のものを用いるべきであると思います。
これまでの算定表も金科玉条ではなく,時が進むに連れて,少しずつ変わっていくべきものなのでしょう。
しかし変えるときというのは結構反対があったりするのですよね。守るべきものは守り,変えるべきものは変える。そうありたいものです。
ではでは。