Monthly archives "1月 2017"

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こんばんは。

弁護士の宮本です。

さて,深夜の更新で失礼致します。

このところ,家事事件で注目すべき裁判例が続いているので,今日も一つご紹介します。以下はニュースの引用です。
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母親に親権認める逆転判決 面会交流「年100日」巡り 2017年1月26日16時17分(朝日新聞デジタル)

http://www.asahi.com/articles/ASK1V45LXK1VUTIL01G.html?iref

別居している夫婦が長女(9)の親権と離婚をめぐって争っている訴訟で、東京高裁(菊池洋一裁判長)は26日、「母親が長女と面会する機会を年100日 確保する」と提案した父親に親権を認めた一審・千葉家裁松戸支部の判決を変更 し、母親に親権を認めた。

一審判決によると、母親は2010年に長女を連れて実家に帰り、父親と別居。 父親は数回は長女と面会できたが、その後に夫婦間の対立が深まって母親が面会 を拒んだ。同支部は12年に審判で、保護者として長女を育てる「監護者」に母 親を指定した。

裁判では、定期的に子どもに合わせる「面会交流」の条件が争点に。父親は 「年100日」と提案し、母親は「月1回程度」と主張した。一審判決は「長女 が両親の愛情を受けて健全に成長するには、父親を親権者と指定するのが相当だ」 と判断し、長女を父親に引き渡すよう母親に命じていた。

離婚する夫婦の親権をめぐっては、子どもを主に養育していた母親が、離婚後 も親権者になる方が保護者として継続性があると判断するケースが多い。しかし 一審判決は、対立する母親に友好的で寛容な面会交流の案を示したことを理由に、 同居していない父親の方に親権を認めたことで注目された。

ーーーーーーーーーーーーーーー(引用終わり)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この判決,原審(第一審)は千葉家裁松戸支部なのですが,出たときにかなりのインパクトがありました。

基本的な考え方として,お子さんの親権をめぐって争いが起きている場合,特に小さいお子さんの場合には,「監護の継続性」が重視されているように感じています。

ニュースの中でも,「保護者として継続性があると判断」と書いていますよね。これはたぶんそのことなんだと思います。

ですので,事案に即して考えれば,それまでも面倒を見ている母親(これは母親だから,ということではないです)が親権者として指定されるケースのほうが多かったと思います。

ところが,千葉家裁松戸支部は,「自分が親権者になった場合には,年100回程度面会交流させる」と提案した父の主張を,対立する当事者に対し,緊密な親子関係の継続を目指して友好的な案を提示している,という理由で認め,お子さんの親権者を父としました。

いわゆるフレンドリー・ペアレント・ルールと言うやつです。

かなりラディカルな判断だと思いますが,予想通りに反発は強く,母が控訴し,東京高裁ではひっくり返りました。

高裁の理由はすごく明快で,「面会交流をどのように行っていくかは,親権者を定める際に考慮すべき事項の一つだけれども,面会交流だけでお子さんが育つわけでもないから,そのことだけで決めるわけではないし,ほかの事項より重要度が高いわけでもない」ということです。

その後に引き続いて①母の養育には問題がない,②監護能力は父と母で大きな差はない,③お子さんは母と暮らしたいと言っている,ということから,親権者を母と定めています。

実務の感覚としては,高裁の判断の方がしっくり来ます。

確かに面会交流を円滑に行うことは重要なのですが,これはあくまでも提案ですので,そのとおりに実施される保障は全くありません。有り体に言ってしまえば,いったん親権者が決まってしまえば,100日の面会交流をさせなくても親権者変更とはならないでしょう。

しかも,本件確か父と母の居住地が結構離れてて,片道2時間位かかるのだったと思います。

そうすると,面会交流を実施することが,果たしてお子さんのためになるのか,ということにも疑問符がつきますよね。3日に1度,往復で何時間もかけて移動するわけですから。

上告するかどうかはわかりませんが,今のところ,この方向でいいのだと思っています。

これが先例となれば,面会交流の提案に偏重した親権者決定になりかねませんからね。

 

タイトルはフレンドリーつながりでした。トウカイテイオーが勝ったジャパンカップに来ていた牝馬を連想された方は,僕と握手です。

それではまた。

 

宮本

 

 

それでも町は廻っている

こんばんは。

弁護士の宮本です。

さて,今日は興味深い裁判例が出ていたのでご紹介します。

====以下引用====

● 子供への面会拒否 元妻の再婚相手にも賠償命令 熊本地裁 毎日新聞2017年1月23日 07時45分(最終更新 1月23日 07時45分) http://mainichi.jp/articles/20170123/k00/00m/040/114000c

熊本県内の40代男性が離婚後に別居した長男(12)と会えないのは元妻と その再婚相手が拒んでいるためとして、2人を相手取って慰謝料300万円の損 害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁(永田雄一裁判官)は、事前の調停で義務づけ られた面会の日程調整に関する連絡義務を怠ったとして再婚相手に元妻と連帯し て30万円を支払うよう命じた。元妻には70万円の支払いを命じた。離婚後に 別居した子供との面会交流拒否を巡り、元配偶者の再婚相手の賠償責任を認める のは異例。  判決は昨年12月27日付。判決によると、男性と元妻は2006年2月の離 婚調停で、親権がない男性と長男の月2回程度の面会交流に合意して離婚。当初 は面会できたが、元妻の再婚後の12年7月ごろ、男性に長男と会わないよう求 める連絡が元妻側からあった。  男性は長男と面会交流できるよう熊本家裁に調停を申し立て、14年1月、再 婚相手を連絡調整役として面会交流することで合意。しかし、元妻や再婚相手か ら連絡が滞り、日程を調整できないまま12年5月~15年10月の約3年5カ 月間、男性は長男と面会できなかった。元妻は、自身の体調不良や再婚相手と長 男との父子関係の確立のために面会できなかったと主張していた。  永田裁判官は「被告の主張は面会日程を調整する協議を拒否することを正当化 するものではない。長男が7歳から10歳に成長する大切な時期に交流できなか った原告の精神的苦痛は相当大きい」と指摘。元妻は日程を協議する義務を怠り、 再婚相手も連絡義務に違反したとして、いずれの賠償責任も認めた。  原告代理人の板井俊介弁護士は「再婚相手の賠償責任を認めた点で画期的だ。 面会交流が父親と子供の双方にとって利益があることを示した判決としても評価 できる」と話した。【柿崎誠】

====引用終わり====

確かに面会交流で直接の当事者ではない第三者に対して,損害賠償義務を認めるのはとても珍しいと思います。

この事件では,どうやら離婚時に父母がお子さんの面会交流を決めて,当初はうまく行っていたようです。

ところがお子さんを監護している母が再婚してから,なかなか父と子の面会交流がうまく行かなくなってきた,と。そこで,父は面会交流調停を申したてて,そこで一定の条項が決められています。この際,母の再婚相手も,「面会交流の連絡調整役」をやることを取り決めた,ということのようです。

しかし,その後も面会交流がうまくいかなかったことから,父は母と,母の再婚相手に対して損害賠償請求をして,それが一部認容された,ということのようですね。

再婚相手に賠償義務を負わせた理由としては,「調停で再婚相手が連絡調整役を務めることとなった」にも関わらず,連絡をしない,ということのようです。

でも,現在の日本では,このような私人の任意の協力に頼らなきゃいけない制度で面会交流が行われている,ということも事実です。

無論,FPICなどの団体は活動していますが,そもそも東北には準備室があるだけで,実際には利用できず,知人や家族などが連絡調整を行わないと,円滑な面会交流が実施できないこともあります。

その上,一度定めた場合には義務を守らないと,賠償義務まで負ってしまうことにもなりかねなくなってしまいました。

本件は報道記事から読み取れる事実からしか内容は把握できませんし,それ以外にも重要な事実があるのかもしれませんが,できれば私人の任意の協力を待つより,国家的な交流支援プロジェクトを進めるのが先だと思うのですがね。

しかし,最近の裁判所は,かなり原則実施論で突き進んでいる感じですよね。何かあった…おっと,誰か来たようです。それではまた。

 

 

Up To Date

こんばんわ。

弁護士の宮本です。

今日は,先日出ました養育費の新算定表についてお話致します。

日弁連は,昨年11月15日に養育費の算定に関する新しい基準,新算定表を公表しました。

詳細は,このpdfをご確認ください。

今までの算定表は,東京と大阪の家庭裁判所の研究チームが作成し,判例タイムズの1111号(2003年4月)に掲載して発表したものです。

この算定表については,①子どもの年齢と人数,②権利者の年収,③義務者の年収という3つがわかれば簡単に養育費や婚姻費用を算定できるもので,非常に簡便であることから広く使用されています。

現在,養育費や婚姻費用の調停では,100%に近いくらい,この算定表が持ち出され,議論が進められています。

無論,簡単に算定できることはとても優れているのですが,事案に即した算定にならないこともしばしばあります。

そこで,これまでの算定表を見直し,新しい算定基準を打ち出したのが,今回発表された「新算定表」です。

初めに申しておきますと,この新算定表で算定した場合,これまでの養育費や婚姻費用より,金額は高くなります。

これは見直した項目に由来しているのですが,まずは見直した項目とその理由についてご説明します。

1 まず,税金や社会保険料,年金保険料などを,最新のものに改めました。これまでの算定表(次からは「現算定表」と言います)は,2003年当時の税率で計算してましたし,そもそも社会保険料などは適当に定められていました。これを2016年版に改め,今後税率が改定した場合にも対応できるようにしました。

2 義務者の住居費を控除しないこととしました。現算定表では,可処分所得(養育費を計算する基礎となる金額=自由に使えるお金,と思ってください)を計算する際に,義務者の住居費を控除していましたが,お子さんの住居費と義務者の住居費は同じく可処分所得から分担させるべき,という観点から,義務者の住居費は可処分所得に含めることとなっています。

3 可処分所得を計算する際に控除する職業費の計算方法を見直しました。これまで,控除する職業費の費目は,世帯全員でかかる金額を控除していましたが,これは不公平だ,ということで,義務者にかかる金額のみを控除することとしました。何を言っているか少しわかりづらいと思いますので,少し解説します。これまで,可処分所得を計算する際,収入から一定額を「職業費」として控除していました。この職業費は,当時の家計調査年報から引っ張っていたのですが,そこに記載されていた金額は,世帯全員の金額だったんですね。例えば,4人世帯であれば,携帯代は月25,000円としましょうか。そうすると,現算定表では,この25,000円がまるまる職業費として控除されていました。ただ,これは4人だから25,000円なので,義務者1人であれば25,000円もかからないですよね。そこで,働いている人の人数分の金額を計算して,その金額のみを控除するようにしました。

その他にも見直した点はあるのですが,大きな変更点はこの3つです。

今後,すぐには算定基準は変わらないと思いますが,少なくとも税率などは最新のものを用いるべきであると思います。

これまでの算定表も金科玉条ではなく,時が進むに連れて,少しずつ変わっていくべきものなのでしょう。

しかし変えるときというのは結構反対があったりするのですよね。守るべきものは守り,変えるべきものは変える。そうありたいものです。

 

ではでは。

 

 

青い山脈

こんばんは。

弁護士の宮本です。

2017年初めのエントリになります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて,私の数少ない趣味の一つに山歩きがあるのですが,昨年11月29日に,山岳救助に関する最高裁の決定が出ていましたので,少しご紹介をしておきます。

この決定は上告棄却で,高裁の判決が確定してます。そして,高裁では,山岳救助に当たった北海道警察の過失を認めた上で,約1800万円の損害賠償を認めています。

無論,山を歩いたことがある方はお分かりになると思うのですが,基本,登山は自己責任で行うものであり,遭難した場合に救助隊の責任が認められることは殆どないのだと思います。

そうすると,この決定(もしくは損害賠償を認容した高裁判決)は,これからの山岳救助のあり方に一石を投じるようなものなのでしょうか。

気になって地裁判決を確認したのですが,少し事件の性質というものが見えてくるような気がします。

事故自体は,平成21年1月31日から2月1日にかけて,北海道の積丹岳で起こりました。

スノーボードのため仲間と山に入ったAさんが,悪天候のため山頂でビバークし,救助要請を行います。その後,北海道警察がAさんを発見し,ストレッチャーに乗せて下山させようとしますが,雪庇を踏み抜いたり,ストレッチャーが崖下に落ちてしまったり,と幾つかの事故が重なって,結果的に,Aさんを救助することはできなかった事故です。

地裁では,概ね次のような判断がされています。

1 救助隊は事故の二日前に当該山で訓練を行っていて,山頂付近には雪庇が有り,雪庇ができている場所は崖であることが分かっていながら,細心の注意を払って雪庇部分を避けるようなルート選択をしなかった

2 Aさんが発見されたときには,カフェオレを飲むことができるなど,自力で足を動かせる程度の体力は残っていた。

3 滑落後,Aさんの容態は悪化しており,凍傷や低体温症が進行していた。

1について,地裁は国家賠償法上違法であるとした上で,2,3からすると,きちんとした救助を行っていれば,Aさんを救助することができたとして,請求を認めています。

もっとも,単独で山頂まで登山を敢行しビバークに適さない山頂でビバークをしたことは,事故を誘発したものでして,8割の過失相殺を認めています。

このように地裁は北海道警察の責任を認めていますが,本件では,まず,一度は北海道警察がAさんを発見し,保護していると言う事情があります。

また,その後,直近で訓練をし,特性についてもわかっているはずであろう雪庇部分を避けることなく(実際には避けているのでしょうが,十分に注意を払っていないままに,と言う意味です)進行し,結果,雪庇を踏み抜いてしまっています。

確かに山岳救助を行う方は,自らも危険に晒しながら業務を行っているのであって,それ自体はものすごく素晴らしいことなのだと思います。

だからこそ,救助にはきちんとした対策を取られるべきなのであり,本件では,残念ながらその対策が欠けていた,ということなのでしょう。

ですので,この判断は,山岳救助全体に波及するものではなく,あくまでもレアケースと見るのが妥当な気がしています。

無雪期登山でも息が上がっている自分も,肝に銘じておかなければなりませんね。

それではまた。

 

宮本