Monthly archives "7月 2016"

まちのせんもんか

こんばんわ。

弁護士の宮本です。

さて,今日も判例紹介です。

今日は最一小判平成28年6月28日【平26(受)1813号 ・ 平26(受)1814号】です。

債務整理を依頼された認定司法書士が、裁判外の和解について代理することができない場合についての判断です。

最高裁の判例要旨に,「…た事例」との記載がある場合があるのですが,この場合は原則事例判断,つまり,「本件のような事情のもとではこうですよ」という判断に過ぎません。

同じ事案であっても,事情が異なれば違う判断になることも十分に予想されます。昨日ご紹介した判例はまさに事例判断で,このような事情のもとでは,飲み会帰りの事故は労災だ,と言ってますね。

さてさて,そこで今回の判例を見てみると,「…できない場合」と言う要旨になってます。

つまり事例判断ではなく,認定司法書士が裁判外の和解ができないのはこういう時です,と見解を出したことになります。

それでは詳しく見てみます。

司法書士のうち,一定の研修と試験を受けた方は,法務大臣の認定を受け(認定司法書士),簡易裁判所における代理を行うことができます。

ちなみにこの研修は私の地元でやってました。今もやっているのでしょうか。

簡易裁判所は訴額140万円以下の事件を扱うものですので,認定司法書士が代理人として扱えるのも,140万円以下の事件,ということになりますね。

それでは,この「140万円以下」の事件とはどういうものを指すのでしょうか。

認定司法書士が数多く手掛ける事件の一つに「債務整理」やそれに伴う「過払金返還請求事件」があります。

利息制限法の制限利率を超える利率で取引をしていた場合で,利息制限法の制限利率で引き直すと,払い過ぎた利息の返還を求めることができる,というものです。

このような過払金返還請求の場合,事件に着手した時は高い利率で計算していますので,金融会社Aには債務が残っている(例えば100万円)事があります。

Aとの取引を制限利率に引き直して計算すると,債務はなくなり,反対に140万円の過払い金が発生していたとしましょう。

そうすると,依頼者が得る経済的利益,というのはいくらになるのでしょうか。

①単に過払い金140万円を請求するだけですから,140万円でしょうか。

それとも,②-100万円から+140万円になりましたから,240万円でしょうか。

また,Aだけではなく,別の金融会社Bとも同じ状況だったとして,経済的利益は③合算して280万円になるのでしょうか,④480万円になるのでしょうか。

最高裁は,これを「当該債務整理の対象となる個別の債権の価額」によって決めるべき,としました。つまり①です。

ただ 裏を返せば,1000万円の債務が有り,交渉して900万円の返済ですみました(=経済的利益は1000-900万円で100万円)とは言えないということになりますね。

この問題は弁護士と司法書士の職域にも関わる問題で,以前からかなり議論になっていたのですが,最高裁として一定の判断を示した結果になります。

私はむしろこの後起こりうることの方がえげつないのではないか,とも思っているのですが,またそれは別の機会にお話することにしたいと思います。

それでは。

 

Under Control

こんばんは。弁護士の宮本です。

毎度言っているような気がしますが,更新がご無沙汰になってしまいました。

このところ,興味深い判例が出ていますので,少しご紹介したいと思います。

今日は,【最二小判平成28年7月8日(平26(行ヒ)494号)】です。

簡単に言うと,会社の歓送迎会の帰り道で事故にあった場合,労災の対象となるか,と言う話です。

ご存知のとおり,業務の中で怪我を負ったり亡くなってしまった場合には,「労働者災害補償保険法」という法律で補償が受けられることになっています。

本件は,会社の飲み会の帰り道(本来的意味での帰り道ではありません。本件は通勤災害ではないこともポイントです。)で事故に遭った場合,「労災」になるか,という点が争われました。

結論として,最高裁は「本件の事実関係の下では」事故は労災だとしました。

労災になるためには様々な要件があるのですが,その一つに,業務中に起こった事故である,ということ挙げられます。

この「業務中に起こった事故」ということはどうやって判別するか,というと,以前の判例では,「労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態において当該災害が発生したことが必要」としていました。

基本的に,本件でもこの枠組は維持しています。

その上で,最高裁は次のような事実関係を認めた上で,本件では「業務中に起こった事故である」としました。

例えば,

①上司から飲み会に誘われ,資料の作成を理由に一度断ったにも関わらず,参加を強く求められた

②資料作成の期限は伸ばされていないから,飲み会に参加した後,業務に戻ることを余儀なくされていた

③社内の親睦を図るために開催されており,ほぼ全員が参加していた

④飲み会の費用が,会社の福利厚生費から支出されていた

のような事情です。

このような事情のもとでは,飲み会は「本件会社の事業活動に密接に関連して行われた」ものであって,飲み会に参加し,従業員を送って会社に戻る行動は,会社から要請されたもの,つまり,会社の支配下にあったとしました。

とても雑駁に書きましたが,最高裁の判断はこのような流れです。

ただ,ニュースなどでは「飲み会も会社の業務と判断」などと言われていますが,それは少し外れていると思います。

本件も,従来の判断枠組みを崩したわけではなく,単に今回の飲み会は少し特殊だったため,飲み会とは言っても業務中と認められた,と考えたほうが良さそうです。

事例としては非常に興味深いものでしたので,ご紹介してみました。

それでは。

 

宮本